地域への想い一心に『桑青汁』

さつま町桑青汁園 中山敬志さん

はじめに
地域ブランド『薩摩のさつま』の認証品を生み出す作り手の方を訪問し、商品が生まれた
背景や風土をお届けするシリーズ。
今回お話を伺ったのは、『桑青汁』をつくるさつま町桑青汁園代表 中山敬志さんです。
甘みのある抹茶のようなすっきりとした飲みやすさが特徴の『桑青汁』。
さつま町にて古くからの由来がある桑の葉をつかった、桑青汁づくりの先にある想いやそ
の背景とは・・・。


聞き手:田口(以下省略)
――さつま町で有機栽培によって育成した桑の葉を使用してつくられる『桑青汁』。認証品の
お話をお伺いする前に、まずは桑の葉の栽培を始められたきっかけのところから、お話を
お伺いさせていただきます。


桑の葉をつくられたきっかけとしては、中山さんの代からつくり始められたのですか?

それとも先祖代々、(さつま町)柊野地区で栽培されてきたものなのでしょうか。

宮之城町(さつま町は平成17 年に、宮之城町、鶴田町、薩摩町が合併)は製糸工場が2
軒もあって、養蚕が結構盛んだったんです。
この集落も現金収入の中でも一番多かったものが米か、養蚕のための桑だったから、畑は
ほとんど桑畑になっていたんだけど、時代の変化によってだんだんと化学繊維に押され
て、養蚕は採算が取れないという状態で、さつま町の製糸業が全体的にも廃れていったの
です。
それで、昭和63 年に最後の養蚕業をされているところがお終いになって、それと合わせ
て桑の栽培もなくなってしまったんですよ。


歴史的なところでいうと、もともとさつま町(旧宮之城町)は製糸業が盛んで桑を栽培さ
れていたということですが、桑自体、幼いころから中山さんの生活の中にはあったんです
か?


物心ついたところから地域の産業として、養蚕はありましたね。
蚕さんが桑の葉を食べるときは「ザーッ」とした雨が降るような音がするんですよ。
大きなバラ(養蚕で使われる平たい籠)という用具があったんだけど、そこに桑の葉を乗
せて、家の中で蚕を育てていました。
それから、家の中では飼うのが大変だということで、家の外に蚕さん専用の軽量鉄骨の小
屋を作っていました。
今でも「なんであんなところに小屋があるんだろうか。」と思えるものがあったら、それ
は蚕さんを育てていた名残ですね。

養蚕が盛んな地域だったという証ですね。
柊野では、桑の栽培が昭和63 年頃まで養蚕農家があったとおっしゃいましたが、中山さ
んはいつ頃から桑の栽培を始められたのですか?


平成27 年の3 月に青汁用の桑を植えました。
その当時、さつま町役場から「青汁をつくりませんか」「桑を植えませんか」という話が
どこの集落にもあったみたい。

町も推し進めたい産業ではあったんですね。

活性化事業としてあったんでしょうね。
本当はさつま町全体でもっと桑の栽培を広めたいという思いがあったんだろうけど、どこ
も手を挙げなかったから、柊野地区だけになりました。
宮之城町(現在のさつま町)にあった片倉宮之城製糸や堀之内製糸なんてすっごい大きい
工場があって、当時は生糸を生産するために、地域の産業としてあらゆるところに桑畑が
あったんだけどね。

今、さつま町で桑を育てられているのは中山さんだけになるのですか?

そうだと思います。


さつま町唯一の桑農園じゃないですか!
桑の栽培を始められる当初、桑青汁をつくってみようと思われたきっかけは何だったので
しょうか?


何か地域の産業としてあった方がいいのかなという思いがありました。町農政課からの勧
めもありまして、当時私は公民館⾧という役職もあったし、「地域の活性化をやりましょ
う」とみんなに声をかけたんです。地区の整備事業で畑が田んぼになり、桑の栽培ができ
る場所がなかったんですけど。

最初に桑を植えたところは、山手の方でした。
土質が田んぼだったからか、挿し木をしたから結構活着率が良かったんです。
ただ2、3 年経った頃から、鹿の被害に遭い、、今の場所に植えたんですよ。

桑農園の場所は少しずつ変わっていったんですね。
桑というと、桑茶のイメージもありますが、お茶にせずに青汁にしてるのは、桑の成分が全
部粉末となることも関係しているのでしょうか?


そうですね、青汁にするのは、桑の葉の成分全てをそのまま粉末状にすることができるの
で、桑の葉の栄養をそのまま飲むことができて、みんなの健康のためにそうしているんで
すよ。


桑青汁は健康にも良い上に、すごく飲みやすいですよね。
私もこれまでさまざまな青汁を飲んできたのですが、中山さんがつくる桑の葉の青汁の飲み
やすさにびっくりしました。
美味しさはもちろん、えぐみとか青汁特有のくさみがないように感じます。


おかげさまで、こうしてみなさんにブランドとして広めてもらえて、美味しく飲んでいた
だけるからありがたいです。

そういうお手伝いができているとしたらすごく嬉しいことですし、私たちも桑青汁の美味し
さを知ることができたとともに、中山さんのエネルギッシュさにもすごく刺激も受けていま
す。ありがとうございます。


桑の葉は栽培から製造まで中山さんが自らされているのですか?

苗は(鹿児島県)加治木町にある農園さんから挿し木用の苗木を購入しました。
2、3 年くらい経ったときに(隣町の薩摩川内市)南瀬の方が「青汁の加工を引き受けます
よ」とお声がけくださり、そこに今でも加工を頼んでいます。
その方がいなかったら、1、2 年で桑青汁づくりを辞めていたかもしれません。


認証品は有機栽培の認定「有機JAS マーク」を取られていますね。取られるまでにとてもご
苦労があったのではと想像するのですが…。


勧められて桑の葉の有機栽培をしようとしたんだけど、有機認証を取るのも、いろいろ規定があってですね。
申請してから3 年間は、畑に農薬を使ってないか、化学肥料は使ってないかというのをち
ゃんと調べていただきました。
自分の畑の状態だけじゃなく、隣の畑が何をつくっているかとか、自分の圃場が田んぼの
中にはないかとか。外注先も有機の許可をもらったところでなければいけないとか、そう
いう規定があって、申請してから3 年目に有機JAS マークを取得できました。

すごく徹底管理されているのですね。無農薬っていうと、農薬を畑で使っていないっていう
イメージはあるんですけど、最初から最後までの工程もそうですし、時間的にも周りで何を
つくっていたかとかもそうですし、あと周りで何をつくっていたかっていうところも徹底的
に管理されている。しかも申請してから数年後じゃないと、それを認められないわけですよ
ね。
すごく手間ひまかけて、有機栽培の桑青汁ができているんですね。


そう。有機認証を取れば、安全な青汁を安心して飲んでもらえるかなと思って。

わたしたち飲む側としては、その恩恵を受けるわけですけども、それだけ大変なことをあえ
てされるってすごいことだと思います。
「安心して飲んでもらいたいから」というのが一番だと思いますが、そこまでして有機とい
うものにこだわられたのには、なにかほかに理由があるのですか?


「これからは、安心安全の有機でなければ」という声もあって。

有機のシールが貼られるまでに、それだけの時間と努力とみなさん(外注先)との関係性が
重なっているとは知らなかったので、有機認証がより一層魅力的に感じます。
手間ひまかけて育てた桑の葉は、何月ごろに収穫されるのですか?


7 月と10 月の末頃です。
だから7 月に全部収穫するのですが、そこから10 月までに再びびっくりするぐらい成⾧
します。

桑の木から葉が芽吹く様子。


7月に収穫して3 ヶ月間で伸びた後、さらに10 月にも収穫されるじゃないですか。
またその翌年の7 月までは成⾧しないのですか?


10 月の収穫後は寒くなるからもうほとんど伸びない。
その後春に芽吹いてくるんですよ。その中で、勢いのいい芽をを2、3 本残して剪定しま
す。

剪定も終えた上で、7 月に収穫するということですね。

そう、だからその夏の間には草がたくさん生えますから、農薬を使えませんので草との戦いで
す。
草刈り機で刈ったり、トラクターで耕したり、あとは手で取ったりします。


桑の木は、毎年植え直すとかじゃなくて、一回植えたら何年ももつというところで、お手入
れがすごく重要になってくるんですね。


一回植えれば、害虫から食われない限りは桑の木の株が大きくなっていくわけです。
中には枯れたのもある。でも枯れたのは仕方ないから切って、10 月の収穫が終わったあと、春先に補植します。

中山さんの桑ならではの特徴はあるんですか?

今つくっている桑の品種は青汁専用の葉っぱが大きくて分厚い桑の葉の「センシン」とい
う品種なんです。


桑青汁づくりをはじめられて、何か変わったことはありますか?

物産館に出品したり、イベント等に参加したりして、今まで桑青汁なんて見たこともない
し、飲んでみたこともないというような人にも知ってもらえるということはいいことです
よね。

新たに桑青汁を知って、たくさんの人に桑青汁を飲んで健康で元気でいていただきたいです
ね。


薩摩のさつまは次世代への子どもたちに向けた取り組みをブランド全体で行っていて、認証
品の一部を活用させていただき、2023 年の12 月にベンチを寄贈することができ、今後も地
域のために、次世代のために、継続的に取り組めていけたらいいなと思っています。
お話を伺う中で、中山さんも「地域のため」に桑青汁づくりをされているとのことですが、
今後地域の未来や、子どもたちのために思われていることなどお伺いしたいです。


柊野地区には現在、子どもが少ないです。今小学生、中学生が何人いるのかな。
さつま町に小学校は何箇所か残っていますが、中学校と高校はそれぞれ1 校ずつなんです
よね。
子どもが少なくなり薩摩中央高校に入学する生徒も少なく定員が割れてるから、宮之城中
学校の卒業生のせめて半分近くは薩摩中央高校に行ってほしいと思ってる。
みんながやる気を持ってくれればいいな。
私は“地元愛”で一生懸命、地域のために何かしてやろう、頑張ろうという気持ちがあるか
ら。


中山さんがおっしゃるように、地方全体で高校生だったり中学生だったり、子どもたちを育
てていく仕組みづくりみたいなところにも、もしかしたら、私たちの次世代支援の取り組み
が生きてくるかもしれないですよね。
私たちも直接的じゃないですけど、ブランドを盛り上げるお手伝いをさせていただいている
中で、特産とか、そういう分野でお手伝いができたり関わりをつくれたらいいなと思ってい
ます。


よろしくお願いします。

本日は貴重なお時間をありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

 ※取材:田口佳那子(さつま町地域プロジェクトディレクター)
  撮影:青嵜 直樹(さつま町地域プロジェクトディレクター)

薩摩のさつまロゴ認証品のご紹介

さつま町桑青汁園『桑青汁』

さつま町桑青汁園『桑青汁』

毎年約20万本の彼岸花が咲き誇る、水と土に恵まれたさつま町の柊野地区で、ひとつひとつを丁寧に手作業で手間と時間をかけて育て上げ、念願の有機JAS認証を取得。有機桑葉を100%使用した桑青汁です。

一. 農薬や化学肥料を一切使用しない完全有機農法で栽培。そのため、年間数回に渡る除草作業といった手間と時間のかかる環境整備の結果、有機JAS認証を取得。

二.桑葉はカルシウム、食物繊維、亜鉛等の生活に不足しがちなミネラルをバランスよく含有。ノンカフェインですので、年齢にかかわらず健康維持におすすめです。

三.甘味のある抹茶のような味のため、水またはお湯に溶かす以外に、牛乳や甘酒との相性も良く、お菓子づくりやお料理に入れても美味しくお召し上がりいただけます。

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