薩摩のさつまブランド認証を目指したわけ『是枝商店』

~薩摩のさつま認証に向けた実践型セミナーの開催に際して~

聞き手:青嵜(以下省略)

――さつま町で120年以上も愛される名物『いちごまんじゅう』をつくる是枝商店の是枝 樹さん。

薩摩のさつまの認証に必要な実践型セミナーが今年度も7月以降に開催されますが、今日はその応募に先だって、2021年度に認証を受けられた是枝さんに『薩摩のさつま』の認証を受けた背景をお伺いしたいと思います。

まず最初に認証を取ろうと思った理由をお伺いさせてください。

そもそも是枝さんは、東京で働かれた後にUターンでさつま町に戻ってこられてお店を継がれていますよね。120年以上の歴史を持ち、地域でも知らない人はいない程に認知のある商品を作られているわけですが、地域ブランドの認証を取ろうと思ったのはなぜですか?

ちょうど薩摩のさつまが立ち上がるタイミングでもあったのですが、最初は、その当時に薩摩のさつまを担当されていた役場職員さんからお誘いがあったことがきっかけでした。

そのお話をいただいた上で、僕個人としては、地域の方々と知り合う機会ができて、コミュニケーションを取れる場が欲しかったという想いがあったので参加しようと思ったんです。

「コミュニケーションを取れる場が欲しかった」という想いの背景を、もうちょっと具体的に教えていただけますか?

Uターンで帰ってきて自分のお店で仕事だけをしてると、家族経営だし他にスタッフさんがいるわけではないので、お客さんとの会話は別としても、自分や家族とのコミュニケーションだけで完結してしまうんですよね。

家の中での会話が全てになってしまうので、外の情報が全然入ってこないし、町がどういう風になってるんだろうとか、自分からアクションを起こして情報を取りに行かないといけないんです。

ただ、薩摩のさつまのようなコミュニティに関わることで、会があれば集まって話があるだろうし、なるべく外からの情報が欲しかったので、それで入りたいなって思ったのが一番の理由でした。

薩摩のさつまの認証には、その過程で5回のセミナーに参加いただき、自社商品のブランディングとして伝え方を磨き上げる実践型の学びが必要になります。

そこと合わせて、是枝さんの求めているものは「地域がお薦めする逸品」というお墨付き以上に、そこに集まる人たちと関わりたかったということですね?

そうですね。

ありがたいことに「いちごまんじゅう」は地元名物として多くの方に知っていただけているので、既にブランドのようになっていると思っています。

ですので、うちの商品が認証を取ることで「何か町の役に立てるんだったら」という姿勢で参加しました。

それもあって、最初は、どちらかというと町の色々な方と繋がりをつくってコミュニケーションを取って、どういうものを作ってるとか、どういう気持ちで商品を作ってるのかを知りたかったですね。

そういう姿勢で参加することによって、うちはどうしていこうかなといったアイディアが生まれるきっかけにしたかったのがあります。

その上で、認証を受けるために実践型セミナーを受講された訳ですが、実際に人の集まる場に関わられて、関わる前と実際に関わられた後での心境等の変化はありましたか?

実際に関わった後では、やっぱりコミュニケーションの力が全然違いましたね。

例えば、「今度東京でイベントを開催するので、商品を提供してもらえないか」といった話をもらえたり取材等で記事を作ってもらったり、自分だけではできないことをしてもらえたり。

色々な情報が外から入ってくるのと、商品を提供してくださいっていう話が来るっていうのが、やっぱりすごい変化としてありました。

販路やPRの幅が広がるのは、ブランド認証を受けた上で、すごくわかりやすい変化ですよね。

一方で、ちょっと深ぼりして伺いたいのですが、”コミュニケーションの力”というのは是枝さん自身のコミュニケーション力の変化なのか、今お店を巡るコミュニケーションの何か変化のことなのか、詳しく教えていただけますか?

それで言うと両方なんですけど、僕個人としては、お店の中やお客さんとの会話だけで完結していたコミュニケーションが、何ていうか…町を良くしていこうという想いのある方たちと、目線を合わせて何かやっていこうっていうところに広がりと力をもらえるように思うんです。

みんなで物事を作るのが好きなところもあって、そういうところに自分も加わって、一緒に「ああしましょう、こうしましょう」っていうような事業者さんたちと関われることがすごく大きくなったというか。

例えば、商品の話ではあるんですが、熊田製茶さんと山下製菓さんがコラボ商品として抹茶飴を作られたんですよね。

そのコラボ商品って、たぶん薩摩のさつまのセミナーの集まりがきっかけだったと思うので、薩摩のさつまが無かったら絶対できなかったことだと思うんです。

そのやりとりを偶然近くで聞いていたのですが、熊田さんは長期的に提供できる商品を作りたいという想いがあって、山下製菓さんに相談しようと思われていたようなのです。
ただ、なかなか機会がなかったようですが、薩摩のさつまに参加したことで山下製菓さんとも会うことができて、お茶の飴を作りませんか、みたいな話をちょうど僕の目の前で話をしてたんですよ。

それをちょうど隣で聞いてて「ああ!こういうのだよな!」と思って。

目の前で起こったわけだ!

そうなんですよ。

そうそう!これこれ!!と思って。自分が求めていたことが目の前で起こったんですよ!

この話は僕が直接関わっていないので外から見ていたわけですけど、こういったことが僕の中でももっと増えたり、参加を迷われている方も薩摩のさつまの中に入ってきていただければ、人と人との化学反応じゃないですけど、こういうことがどんどん生まれるようにできたらいいなって思っていたので、それが目の前で起こったから、「うわー!!!!!」って思って(笑)

それまでなかったコミュニケーションが増えたことで、目に見える形としても、心境にも変化が生まれたということですね。

そうですね。

やっぱり、薩摩のさつまの立ち上げのときから少しずつ話を聞いていたので、実際に認証事業者として関わるようになってからは、もっとその中心となっているメンバーの方々と関わりを持ちたいっていうか、もっとコミュニケーションを取って、自分ももっと関わりを増やしていきたいなっていう気持ちに変化してきましたね。

外側から「頑張れ」って言うんじゃなくて、もっと主体的に自分も集まりの中に入っていって、「もっと盛り上げていきましょうよ」みたいな気持ちに変化してきたっていうのがあります。

その変化が起きたのは何故だと思いますか

何でだろうなぁ。

自分がUターンで戻ってくる前、東京にいたときに色んなコミュニティに顔を出していて、自分も主催してイベントをやっていたことがあったんです。

そういった経験があったので、やっぱり取組みを自分で主催することの難しさみたいなのを知っているというか学んだところがあったので、そこの中心を担っていただいている方々がつくろうとしている輪を、もっと広げたい気持ちと、できればもっと中心に行きたいっていう気持ちになったのはありますね。

あと、せっかく自分たちの地域を代表するブランドが立ち上がったので、ずっと長く続いてほしいから、やっぱり(年齢が)一番下というか若手な分だけ、取組みに早くから関わることで、そこで作られていく歴史を前を走っている先輩とは違う後ろからの視点で、こういう歴史があったっていうことを次の人たちにも伝えていけるように、自分も最初から関わってたいっていうのがあります。

同じ時代でも、年齢や立場、様々な関わり方があるからこそ、それぞれの役割があるから活かし合える。そういった小さなひとつひとつが地域の特色となってブランド化していくのかもしれませんね。

今日は貴重なお話をありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。

 

※取材:青嵜 直樹/撮影:田口 佳那子(さつま町地域プロジェクトディレクター)

■令和6年度(2024年度)実践型セミナーの募集は6月頃からの開始を予定しております。


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