受け継ぐバトン、学びの一缶「豚味噌」

薩摩中央高校

薩摩中央高校

地域ブランド『薩摩のさつま』の認証品を生み出すつくり手の方を訪問し、商品が生まれた背景や風土をお届けするシリーズ。
今回は、『豚味噌』をつくる鹿児島県立薩摩中央高校のみなさんにお話を伺いました。

昭和初期からつくられ続けている鹿児島県立薩摩中央高校の『豚味噌』。
学校として、今も昔ながらの味を守り続け受け継ぐ生徒さんや先生、そして校長先生の想いやその背景とは・・・。

※インタビューは生徒さん、先生、校長先生の順に、豚味噌製造を担当している生徒さんから3名、生徒さんを指導されている2名の先生、そして校長先生にお話をお伺いしました。



聞き手:田口(以下省略)
――豚味噌が昨年度、地域ブランド「薩摩のさつま」の認証を得ましたが、実際に授業を通して製造に携わってみていかがですか?

左から、竹添由理佳さん、右田天翔さん、富園雅さん

富園さん:普段の食事では既に出来上がったものを食べているんですけど、食品加工で一から材料を混ぜてつくっているので、ものづくりの大変さが分かりました。

右田さん:つくるのが楽しい時もありますが、食品は少しでも異物が入ったらアウトなので緊張感がありますし、放課後に部活がある中で3時間立ちっぱなしでの作業は正直きついですね。

みっちり作業した後の部活動は、体力的にもハードそうですね。

右田さん:いやもう、ハードすぎます。(笑)

竹添さん:実は今日(インタビュー日)、初めて野菜を切る工程を担当しました。学年や時間割ごとに担当する工程が分かれているので、これまでは3年生が調理したものを、受け継いで、混ぜる工程からスタートしていたんです 。

学年を越えてバトンを繋いで、みんなで一つの豚味噌を完成させているのですね。実際に作ってみて、やりがいを感じる瞬間はありますか?

富園さん:親や親戚、中学校の先生たちとかにお土産で渡したとき、「おいしい」「つくったのすごいね」「豚味噌なんて聞いたことなかった」と喜んでもらえたのは嬉しかったですね 。作ってよかったなって思います。

自分たちでつくったものを、美味しいって言ってもらえるのは嬉しいことですよね。

右田さん:出来上がった豚味噌を缶に詰めるのですが、缶を並べたらすごい数になるんですよ。自分たちはこんなにつくったんだって、達成感がありますね。

ものづくりの達成感や衛生管理の学びは、きっと今後の人生でも「生きる力」になりますね。卒業後の進路や、今の経験をどう活かしたいかなど、何か考えられていることはあるのでしょうか?

竹添さん:将来、食品とは関係ないかもしれないけど、ここで学んだ製造や衛生に関する知識は、家庭を持った時に活かしていきたいなと思います。

右田さん:僕は機械・工場系の仕事を目指しています。分野は違いますが、ここで培ったものづくりの姿勢は大切にしたいです 。

分野は違えど、「自らの手で形にする」という精神は共通していますね。皆さんが将来を考える中で、今のさつま町はどのように映っていますか?「もっとこうなったらいいな」と思うことはありますか?

富園さん:隣町にあるような、チェーン店や有名なお店がさつま町にもあったら、もっと人が集まってきて活気があるようになるんじゃないかなって思います。お店でなくても、学校終わりに遊べる場所があったらいいなって思います。そういう青春っぽいことしたいですね。

放課後に、もっとみんなで集まれる場所や話せる場所があるのは大切ですよね。反対に、町の好きなところ、魅力は何だと思いますか?

富園さん:やっぱり温泉が身近にあって、安くていいなと思います。

竹添さん:温泉に行くといろんな地域の方たちが「部活、バレーボール応援しているよ」と話しかけてくださるんです。

富園さん:普段、町の大人と話す機会は少ないですが、前に右田くんと温泉に行った時に、温泉にいるおじさんと話すことがありました。温泉とか、何かのきっかけがあったらもっといろんな人と話せるのかなと思います。

温泉という場所が、町の大切な一つの交流の場になっているのですね。町内会などの地域活動への参加はいかがですか?

富園さん:参加してみたいけど、保護者が県外にいるから行けないです。保護者と一緒だったら行ってたかもしれない。なかなかきっかけがないですね。

竹添さん:部活が忙しくて、普段時間がないです。

きっかけづくりが難しいですよね。忙しい日々を送るみなさんですが、卒業した後、さつま町がどんなまちになっていってほしいか、未来への想いを聞かせてください。

富園さん:自分は田舎を目的にさつま町に来ました。川とかも綺麗で、森とかもあって自然が豊かで。だからこの綺麗さを保ちながらも、どんどん発展していってほしいなと思っています。
川とかでも普通に遊びたいです。思いっきり遊べる自然が身近にあったら、さつま町はもっといいところになるんじゃないかって思います。パックラフトかカヌーとか、体験型の遊びがもっとあったらやってみたいです。

竹添さん:私はさつま町に来た理由がバレーボールなんですけど、スポーツとかバレーボールを通して、まちをもっと盛り上げられたらいいなって思います。

右田さん:やっぱりさつま町の良さっていうのは、自然もあって温泉もあって他のところよりゆったりしてる感じだと思うので、古民家みたいな場所があってもいいし、近くに住んでいる人とか、近くに旅行に来てくれた人とかが、「一日空いたから宮之城行って体を休めようよ」みたいに思ってもらえるようになったらいいな。少し立ち寄って、体を休めるみたいな。

それぐらいがちょうどいいと思うので、しっかり自然と温泉っていう良さを活かして、みんなが「ちょっと立ち寄ろうよ」って思ってもらえるようなまちになってほしいです。

いいですね。今ある魅力を大切にしながら、世代を超えて、外からもたくさんの人が集まる場になる。みなさんの言葉から、素敵な未来が想像できました。実は私も移住者なのですが、みなさんがそれほどまでにこのまちを大切に想ってくれていると知って、なんだか自分のことのように嬉しくなりました 。今日は本当にありがとうございました。

実習中の様子

富園さん、竹添さん、右田さんからは、ものづくりにおける達成感や薩摩中央高校があるさつま町への想いをお話いただきました。学生のみなさんが日々向き合っているのは、単なる調理実習ではなく、昭和初期から続く、長い年月が磨き上げた伝統の味そのもの。

では、その昔ながらの味を支える技術と想いは、どのように受け継がれているのでしょうか。
続いては、現場で熱心に指導にあたられる的場先生と中村先生にお話を伺いました。

左から製造を指導される的場先生、中村先生

薩摩中央高校の豚味噌は美味しいと評判ですよね。変わらない昔ながらの味だといいますが、その秘密はどこにあるのでしょうか。

中村先生:一番の決め手は、やっぱり味噌だと思います。豚味噌のもととなる味噌は、麹からこだわって自家製の白味噌を作っています。私が赴任した当初、30年以上食品加工に携わってきた経験から味噌を見直して、納得のいくものにつくり変えました。

的場先生:私も多くの農業高校で豚味噌製造に携わり食べてきましたが、薩摩中央高校の豚味噌はバランスが絶妙なんです 。単に砂糖の甘さだけでなく、味噌自体の旨みと、この土地の水が合わさることで生まれる「まろやかさ」があります 。私の家族も「ここの豚味噌が一番うまい」と喜んで食べてくれますね 。

昭和初期からの歴史があるなかで、レシピは守られ続けているのですか。

中村先生:基本的な原材料(豚肉、味噌、生姜、人参、玉ねぎ)は変わりませんね。

的場先生:ただ、私が作ると生姜がちょっと多いとか、バランスは少しずつ違ったりはすると思います。それに、ここの豚味噌は煮詰めすぎてないところはあるかもしれません。
煮詰める際の「火から上げるタイミング」といった感覚的な部分が反映されているかなと思います。

豚味噌づくりの作業風景

製造は、教育の一環としても教えられていると思うのですが、学校という現場で、商品を製造し続けることの難しさはありますか?

的場先生:毎年同じことを教えないといけない。
例えば、3月になると、それまで3年生中心でやってきた製造工程が卒業のタイミングでリセット。1年生も2年生も、学年が上がるので、また一からの学びの繰り返しです。

衛生面は特に大事で、製造授業はじめの4月、5月はいい加減なことされると全部ダメになってしまいます。だから緊張感のある授業になるのですが、その中でも、子どもたちが製造を嫌いにならないように、教えることの難しさがあると思います。

先ほど生徒さんのインタビューをさせていただいたのですが、製造の授業はすごく生徒さんの身になっているのではないかと思えるお話をたくさんお伺いしました。緊張感を持たないといけない授業も多いと聞きますが、生徒さんの製造の授業を受ける前と今とで変化は感じられますか?

自分たちでつくって、お客さんにも「私たちがつくりました」と自信をもって声をかけて欲しいです。それを、お客さんがお金を出して買って、「おいしい」って言ってくれる人たちがいるんだよっていうのも知って欲しいですね。

薩摩のさつまにも、ものづくりのプロたちがたくさんいるので、そういう方たちの想いを伝えていけたら、意識もさらに変わっていくのかなと思います。

さつま町には真剣にものづくりに携わる大人がたくさんいらっしゃいますよね。
そんなかっこいいまちの大人たちとの交流の場の一つに薩摩のさつまがあると思うと、今後もますます連携を高めていけたらいいですね。お時間ありがとうございました!

中村先生、的場先生の言葉からは、一筋縄ではいかない教育現場での苦労と、生徒さんの成長を見守る姿勢が伝わってきました。

最後に、この豚味噌が学校、そしてさつま町にとってどのような存在であるのか。
薩摩中央高校の中須校長先生に、これからの展望と生徒たちへの想いを伺いました。

薩摩中央高校 中須校長先生

薩摩中央高校が長年つくり続けてきた豚味噌製造について、どのような想いをお持ちですか?

生徒や先生が代わっても、豚味噌の製造が途絶えることなくずっと続いていて、地域の方々に愛されていることは非常に誇らしいことですね。これからも長く続いてほしいと願っています。生徒たちが一生懸命作ったものということで、町内だけじゃなくて、全国の方々にも愛していただきたいという気持ちがあります。

デザインもレトロで素敵ですが、これは製造を始めた当時から変わらないのですか?

ほとんど古いデザインのままですね 。この素朴で昔から変わらない味こそが、私たちの価値だと思っています。

長年まちの人たちに愛されてきた豚味噌が、昨年、薩摩のさつまの認証を受けました。町のブランドの認証を得たことから、今後の展開に期待することはありますか?

薩摩中央高校としては、地域ブランドへの貢献を大切にしたいと考えています。
豚味噌がブランドに加わることで、地域の方々が一生懸命作っているブランドをより強固なものにできるのであれば、非常に嬉しいことです。

我々は商売でやっているものじゃなく、生徒の学習の一環でやっていますから、生徒たちが一生懸命作った商品が売れた時に、生徒たちへ評価がフィードバックされるということが一番大事で、さらにそれが、薩摩のさつまという地域ブランドに貢献できたら、なおさら生徒たちにとって学習の意味があると思います。

豚味噌が薩摩のさつまの認証を受けた2025年1月の認証品発表会時の一枚

つくることだけでなく、地域ブランドの活動を通じて、まちの大人たちとの関りが生徒たちにとっての大きな学習になる。生徒や職員の負担は大きいのかもしれないけど、学びの場としては非常にありがたいものです。

だから、薩摩のさつまが開催しているセミナー(実践型セミナー)を受けること、発表すること、そういうことを全部乗り越えた子たちというのは、非常に自信があふれてくるので生徒の成長に大きくつながると思います。

生徒さんたちの学習の一助となれていることが、薩摩のさつまとしてとても嬉しいです。
薩摩のさつまは次世代支援を掲げていますが、それに対して学校現場としてはどう感じられていますか?

とても価値ある取り組みだと感じています 。
本当にまちの子どもたちに還元しようという思いが感じられますし、地域貢献としても非常にありがたいなと思っています。

2026年1月の認証品発表会時の一枚

地域の高校生も一緒に活動することで、子どもたちにとっても、大人たちにとっても良い刺激がある、良い循環が生まれているのですね。

失敗してでもいいからやればいいんですよね。そこで学ぶんですよね。
こういうことはうまくいくとか、うまくいかないとかね。
そういうチャンスをつかんで挑戦できる場があるということが、今の子どもたちは恵まれていると思います。薩摩のさつまでの学びが、彼らの将来の糧になると信じています。

薩摩のさつまが生徒さんたちの学びの一端を担えているのでしたら幸いです。
本日、生徒さん、先生、校長先生へのインタビューを経て、この小さな缶から生まれる、生徒さんとまちとの良い循環が、これからもさつま町の未来を明るく照らしてくれるのではないかと思える貴重な時間となりました。
本日は、お時間ありがとうございました。

ありがとうございました。

※取材/撮影:田口 佳那子(さつま町地域プロジェクトディレクター)

薩摩のさつまロゴ認証品のご紹介

豚味噌

豚味噌

本校の豚味噌は、昭和初期から製造しており、長い歴史があります。現在でも製造方法は変わらず、多くの地域の方からも愛されています。食べ方は、温かいご飯にのせて食べるとおいしく食べることができます。

一.原材料の豚肉は、鹿児島ブランドの「茶美豚」を使用しています。 豚肉のゴロっとした食感と、しっかりと感じる野菜の味わいを楽しむことができます。

二.豚味噌を作るうえで欠かせないのが味噌です。本校では自分たちで作った麦味噌を 使用しています。麦味噌は甘みがあり、その甘みが豚味噌の味を引き立てています。

三.塩味が控えめで、生姜の風味と甘みの調和がとれた食べやすい味になっています。小さな子供からご高齢の方にまで人気があり、「また食べたい」と思ってもらえるように製造しています。

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